社会保険料を節約して会社を守りましょう
節税はするけれど・・・
「節税」は一般的なことです。経営者なら誰だって行います。
では「節・社会保険料」はどうでしょうか?
そんなことできるのか、できるとしてもそんなことしていいのか?
そういう疑問は当然です。
「改ざん」はしてはいけません
新聞報道で、年金記録の改ざんが問題となっています。従業員からは支払い給与に応じた保険料を預かっておきながら、実際の届出を「給与が安かった」ということにすることです。これは当然ながら法律を犯しています。ここで取り上げたいのは、現在の法律の範囲での「節税」ならぬ「節社会保険料」です。
しかし、社会保険という仕組みがある以上、その仕組みの範囲では工夫の余地はあります。導入にあたっては、メリットと副作用(デメリット)を勘案して考える必要があります。
正直言いまして、賛否両論です
社会保険料の節減対策により、企業規模にもよりますが毎年数十万円の人件費が節減できます。しかし社会保険料を節減するということは、こうしたメリットの反面で、次のようなデメリットがあることも事実です。
社会保険料は給付と負担との関係にあります。社会保険料をたくさん納めれば、将来もらうことができる年金が増えるという関係にあります。逆に言いますと社会保険料を節減すれば将来もらう給付が下がることになります。
このことを考えずに社会保険料の節減だけに重きを置きすぎると、将来もらうことができた年金の額が下がるため従業員のモチベーション低下を招く危険性があります。
せっかく社会保険料を節減しても従業員のモチベーションが下がってしまったのでは、何のための社会保険料節減だったのか、ということになりかねません。
社会保険料の節減はメリットとデメリットを勘案しトータル的に考えなければなりません。
今後社会保険料の会社に与える影響は
社会保険料はどんどん増え続けます。信じられないほどの上昇が予想されて(というより、法律で定められて)います。その影響の大きさは、コチラにまとめておきました。
具体的にはどうするのか?
いくつかの方法があります。対応候補をいくつかあげましょう。
1.年収の支払い方法によって
2.賞与の支払い方法による対策
3.退職日を一工夫
4.賞与支給月で退職?
5.退職で消滅する年休を買い上げるのは?
簡単にご紹介しましょう。
年収の支払い方法によって
社会保険料は年収だけで決まるわけではなく、保険料を算出するための「保険料額表」の報酬月額に幅があるために、差が生じます。
(平成20年10月現在の一般的な「保険料額表」はこちら)
具体的に計算をして見ましょう。
年収が同じ500万円のAさんBさんの年間社会保険料(会社負担額)を算出してみましょ
う。
ここでは、社会保険料は「健康保険料と厚生年金保険料」とします。
【年収内訳】
Aさん 給与30万円×12月=360万円
賞与70万円×2回=140万円
Bさん 給与31万円×12月=372万円
賞与64万円×2回=128万円
(Aさんが給与が1万円少ない代わりに、Bさんは賞与が多い)
【社会保険料】
Aさん 給与に対する金額 35,235円×12月=423,900 円
賞与 〃 82,425円×2回=164,850 円
合計 588,750 円・・・・(1)
Bさん 給与に対する金額 37,680円×12月=452,160 円
賞与 〃 75,360円×2回=150,720 円
合計 602,880 円・・・・(2)
二人の年間社会保険料の金額差は (2)-(1)=14,130 円
年収が同じであっても、その支払い方法により社会保険料はこのように異なるのです。
もう一人、同じ年収500万円のCさんを試算してみましょう。
【年収内訳】
Cさん 給与30万5千円×12月=366万円
賞与67万円 ×2回=134万円
【社会保険料】
Cさん 給与に対する金額 35,235円×12月=423,900 円
賞与 〃 78,892円×2回=157,784 円
合計 581,684 円・・・・(3)
この結果、BさんとCさんは同じ年収なのに年間保険料金額差は
(2)-(3)=21,196 円 もあることがわかります。
これは、上記に記載しましたように社会保険料が年収だけで決まるわけではなく、
報酬月額に幅があるために生じるカラクリなのです。
例えば健保の22等級は・・・
標準報酬 報酬月額
等級 月額 日額
健保 厚年
21 17 280,000 6,220 270,000~290,000
22 18 300,000 6,667 290,000~310,000
23 19 320,000 7,113 310,000~330,000
とありますが、これは
給与が29万円以上31万円未満の場合は保険料が同じ、ということになります。
つまり、先ほどの例のAさん(30万円)もCさん(30万5千円)も、給与の
保険料は同じということです。
(Bさん(31万円)は等級(つまり保険料)が上がってしまう)
賞与は支給額(千円未満切捨て)に料率をかけますので、金額に応じた保険料と
なります。AさんとCさんを比べると、賞与の少ないCさんのほうが
保険料が少なくなるわけです。
(でも行き過ぎるとBさんのように保険料が高くなってしまいます)
このあたりのバランスを勘案していく必要があります。
さて、AさんBさんの差額 14,130 円をたったそれだけ、と考えますか?
会社全体で、仮に10名の社員でこうした工夫ができたとすると、
10万円の経費節減ですね。決して小さな額ではないと思いますが、いかがでしょうか。
(もちろん順法の範囲で、です)
賞与の支払い方法による対策
主に年収が高い場合に当てはまりますが、賞与にもカラクリがあります。
賞与の保険料は、さっき書いたとおり賞与は支給額(千円未満切捨て)に料率をかけます。
ただしこの場合の上限額は厚生年金の場合150万円なのです。
また賞与は年間累計で540万円が健康保険の上限額となっています。
上限額を超える賞与を支給している場合は、この方法を検討することができます(ただし、賞与の支給額をあらかじめ固定的に決めると、それは社会保険的には「年棒」となり、この方法は利用できません)
同じ年収800万円の二人を想定し、賞与を年一回払いにすることを想定してみましょう。
【年収内訳】
Dさん 給与 50万円×12月=600万円
上期賞与 100万円
下期賞与 100万円
Eさん 給与 50万円×12月=600万円
上期賞与 200万円
下期賞与 ナシ
【社会保険料】
Dさん 給与に対する金額 58,875円×12月=706,500 円
上期賞与 〃 117,750 円
下期賞与 〃 117,750 円
合計 942,000 円・・・・(4)
Eさん 給与に対する金額 58,875円×12月=706,500 円
上期賞与 〃 197,125 円
下期賞与 〃 0 円
合計 903,625 円・・・・(5)
二人の年間社会保険料の金額差は (4)-(5)=38,375 円
もっと年収が高い場合は
賞与に「上限額」があるといいましたが、実は給与にもあります。
「保険料率表」の下のほうを見ますと
厚生年金は 605,000円以上の、健保は1,175,000円以上の金額設定がなく,これらが上限であることを示しています。
健康保険の上限に達するケースはともかくとして、厚生年金については場合によっては考えられなくもありません。
例えば、同じ年収900万円のFさんとGさんを比較してみましょう。
【年収内訳】
Fさん 給与 50万円×12月=600万円
上期賞与 150万円
下期賞与 150万円
Gさん 給与 75万円×12月=600万円
上期賞与 ナシ
下期賞与 ナシ
【社会保険料】
Fさん 給与に対する金額 58,875円×12月=706,500 円
上期賞与 〃 176,625 円
下期賞与 〃 176,625 円
合計 1,059,750 円・・・・(6)
Gさん 給与に対する金額 73,005円×12月=876,060 円
上期賞与 〃 0 円
下期賞与 〃 0 円
合計 876,060 円・・・・(7)
二人の年間社会保険料の金額差は (6)-(7)=183,690 円
年収の支払い方法で、こんなに差が出るのです。
社会保険料節減の方法、いかがですか。
退職日を一工夫
多くの企業では、退職するときはその月の末日付けにするケースが多いようです。
しかし退職する日を一日早くすることで、社会保険料をひと月分削減することができます。もし「区切りがいいから」ということで末日付け退職にしているなら、一工夫の余地はありそうです。
社会保険には、一般には「入社してから退職するまで」加入すると思われています。ほとんどその理解でよろしいのですが、正確には「資格取得日から資格喪失日まで」という管理です。資格取得日は会社に入った日と同じですが、資格喪失日は「会社を退職した次の日」ということになっています。
次に保険料の支払いルールですが、こちらは月単位での管理となっています。資格取得月から喪失月の前月に保険料がかかる(つまり喪失月のにはかからない)ということです。
これを9月30日(末日)退職のケースを例にとって見ましょう。
9月30日退職 → 資格喪失日は10月1日 → 保険料は9月まで必要
一方、一日早め9月29日付け退職としますと
9月29日退職 → 資格喪失日は9月30日 → 保険料は8月まで必要
このように、一か月分の保険料の取り扱いが変わってきます。
賞与支給月で退職
自己都合退職する場合、賞与を受け取ってから退職するケースが多いと思いますが、この場合でも、上記のような資格喪失の際の取り扱いにより、一工夫の余地があります。
賞与に対する保険料は、資格喪失月と同月に支払われた賞与にはかからないことになっています。例えば7月に賞与が支給される会社で、7月末付け退職とその前日のケースを比較しましょう。
7月31日退職 → 資格喪失月は8月 → 8月に支給された賞与にはかからない(7月に支給された賞与にはかかる)
7月30日退職 → 資格喪失日は7月 → 7月に支給された賞与にはかからない
そんなに多発するケースではありませんが、賞与の保険料は給与に比べて一回あたりの金額が大きいので、決して無視できません。
検討の余地はあるのではないでしょうか
冒頭にも記載いたしましたが、従業員のモラルダウンを招いては意味のないことですが、上記に示した例の中には、会社によっては従業員の理解を得ることで実現可能なものもあります。
また各社制度の特性に応じて、これらの考え方を応用する事例もあります。労働条件の「不利益変更」とならないよう、手順を踏むものもあろうかと考えられます。ぜひ一度、ご検討してみてはいかがでしょうか。
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